【ウォルマート】小売り現場のDX化と原点回帰

めーめーおじさんです。

※最初に断っておきますが、本記事には詳細な客観的データを駆使した分析記事とはなっていません。あくまで少なからずこういった業界と関わる仕事をしているので、私の主観が多分に入った記事となります。そもそも分析記事と言えるものを書いて事があるのか…。

さて、先日ですが世界最大の小売り事業者であるウォルマートが、マイクロソフトと連携し中国企業バイトダンスが運営するティックトックを買収する意向が伝えられました。

ウォルマートのティックトック買収に対する理由については同社から発表されていないようですが、恐らくはインターネットマーケティングを強化、とりわけティックトックが保有するビッグデータについてはかなり魅力を感じているのではないでしょうか。

個人的な印象としては、ウォルマートは小売業者の中では最も販売チャネルの多様化に成功しつつある企業の1つだと感じています。

これまで既存の小売業者はアマゾンにやられっぱなしだったわけですが、ウォルマートに関してはそれに追いつけとばかりにネット通販事業に力を入れ、今や同社を牽引するまでに事業を成長させることが出来ました。

同社の決算資料や市場の流れを見る限りではその流れはそう簡単に途切れる事はないと思います。そのような中で、日本においてもウォルマートにある意味で負けず劣らずに変革を起こしつつある小売業者があるのをご存知でしょうか。

トライアルの新店舗での興味深いチャレンジ

話は少し変わりますが、流通業界において少し話題となっている日本企業があります。それが九州を地盤としたディスカウントスーパーである「トライアル」ですね。

同社が千葉県にオープンした長沼店という新店舗ですが、AIカメラやセルフレジ機能が付いたスマートショッピングカートなどのAI技術が使われた先端店舗となっているようです。

残念ながら北海道在住の私は見に行く事が出来ませんが、今回の取組についてはウォルマートも同様の動きをしているなど、流通業界の将来を見通すのに非常に重要な店舗であると考えています。
※ちなみに北海道にも長沼という地名があるので最初は「うん!?」となりましたw

トライアル長沼店では、688台のAIカメラが導入されており、お客様がどういった購買行動をとっているのかをデータ化、分析をしています。

何かの雑誌かネット記事かで見かけたのですが、某ビールメーカーの話として、ゴールデンゾーンの商品陳列(棚割り)を分析し、通常新製品を同ゾーンへ陳列していたのを最上段へ移動し、定番品を並べたことで売上アップしたという話をみました。

※赤枠がゴールデンゾーン

所謂ゴールデンゾーンとは、目線と並行かやや下の方の棚の事を言いますが、新製品は時間をかけても探す購買行動をとるため最上段の最も売り難い場所に配置し、探す手間を省くためにゴールデンゾーンへ定番品を移したことで売上が拡大したそうです。
※什器やカテゴリー、商品構成で変化するので上図はあくまで基本として捉えて下さい。

過去、こういったカメラを使用した定点観測を通じた売場改善を流通は取り組んできましたが、店全体で取り組んでいる事例は日本ではトライアルぐらいではないでしょうか。

また、ショッピングカートにはタブレット端末がついており、自分でその場で商品をスキャンし会計を済ます事が出来るようです。

ここで驚くのは、商品スキャンした時に商品に応じてクーポンの発行や、関連レシピ提案によるついで買いを誘う事が出来る機能がついている事です。

既に国内19店舗で運用しているようですが、これは同社の祖業がソフトウェア開発会社であったことが強みとして発揮しているようです。

ここで同社とウォルマートの共通点としては、急速に『小売りの現場をDX化』しているという事実です。そして何より最終的には顧客に快適に買い物を楽しんでもらうという点に帰結します。

食品スーパーの購買データを分析していると、圧倒的に厚い購買層は主婦層になるのですが、購買行動のうち予め買うものを決めて購買に至る計画購買の比率は約20%と言われています。

残りの非計画購買に働きかけるには上記のショッピングカートの取組は非常に有効であると考えられます。店頭の品揃えが豊富であれば選ぶ楽しみは増しますが、それに伴い迷いも生じます。

商品選択の楽しみと、探す・考えるというプロセスを極力排除させる事でストレスなく購買行動に移してもらうことは、お客様にもメリットですし小売業者側にも売りたいものを買ってもらう確率が上がるなどのメリットが生まれるものと考えます。

極端な話をすれば、お客様は買い物を楽しんでいるようで、小売業者にあれもこれもと商品を買わされるような状況になるという事です。

これは小売業者視点、投資家視点では非常に良い事であり注目していく必要があると思います。

Eコマース全盛時代だが絶対に原点(売場)回帰をする

現在はアマゾンなどのネット通販事業者が隆盛を極めていますし、それらへ力を入れている小売業者は多いかと思います。既存の事業者は、店舗と人員という固定費を抱えて価格面や利便性といった部分で劣っているように論じられることが多いかと思います。

しかし、私はこの先は必ず店頭販売という原点に回帰するだろうという考えを持っています。これは何もネット通販が無くなるとか実店舗に押されて後退するといった話ではありません。

結局は小売りの基本は実店舗であり、実際の売場であると言いたいのです。2017年にアマゾンが食品スーパー大手のホールフーズを買収しましたが、生鮮品の強化やオムニチャネルの推進が語られることが多いと思います。この事実からも結局は小売りの基本は実店舗なんですね。

そしてその現場でどのような革新的な売場に進化させられるかが今後の小売業者の命運をわけるものと考えています。ネットと実店舗の融合、売場のDX化により顧客に満足を提供できる流通が今後も成長していくんだろうと思います。

そういった意味では、現在のウォルマートの事業内容や先を見据えた投資内容を見ていると、同社を追い抜く企業は当面現れないだろうと考えてしまいます。要するに長期でじっくり投資、保有したいと思わせる良い会社だなという事です。

さて、ここで私が現在投資をしているGO(グロサリーアウトレット)はどうなのか?という部分があると思います。正直実際の店舗を見て判断出来ないですが、同社資料を見ているとDX化には縁遠い部分があるなと思います。

しかし、ここで考えなければいけないのは、最終的には顧客満足という部分を見ていけば、手段は違くとも本質的には目的は同じような動きとなっていると考えています。

同社はサプライヤーから引き取ったアウトレット品を格安販売している事が事業の柱になっているわけですが、『価格』というもっとも単純で分かり易い部分を全面に押し出しているわけです。

ここでいう価格は中途半端なディスカウントではありません。GOはハードディスカウント業態と言われるような食品スーパーです。

お客様は買い物に行くたびに、これがこんな価格で買えるの!?という驚きと満足を手に入れられるわけです。こういった売り方は同業他社はなかなか真似の出来る手法ではありません。

業態は少し違うかもしれませんが、倉庫型スーパーのコストコも売場でのドキドキといった満足を顧客に与える事が出来ています。お店自体がテーマパークのような感覚ですね。

この2社についての共通点も、実店舗でしかこういった体験、満足をお客様へ提供出来ないという点が一致しています。

とりわけ、まだ成長性という意味でGOは将来性を感じますので投資をしているわけですが、私の結論である原点(店頭)回帰という流れはくると確信しています。

どうもここ最近の流れを見ているとEコマースに長けた企業が注目されがちですが、その先まで考えた論調をあまり見かけないのが残念です。

まああくまで上記の考えはあくまで私の独断と偏見に基づくものではあるのですが、ウォルマート、コストコ、グロサリーアウトレットのような何か尖ったものを持っている小売業者は投資する価値があると思いますが、既存の店舗を単純なアップデートしかできない流通、特に特定のサプライヤーと政治的結びつきが強く、ショッピングモールに入るテナントの集客力に頼っているにも関わらず、自分の力と過信しているような流通に対しては将来性を感じませんので、全く投資対象にはならないと断言出来ます。

ランキングに参加しています。励みになりますのでクリックして応援して下さると嬉しいです。